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独占状態が招く恐怖

21日、夜のニュースはアメリカの司法省が反トラスト法違反で、アメリカGoogleを提訴したという話題が大きく扱われていました。
反トラスト法とは、事業者による不当な取引制限や価格協定、市場独占を禁止する3つの法律「シャーマン法」「クレイトン法」「連邦取引委員会法」の総称で、日本の独占禁止法に相当します。
それは、アメリカでGoogleが独占状態で競争を妨げているのではないかということです。

確かに検索サービスにおけるGoogleのシェアは世界でもアメリカでも9割に達しています。それが、いわゆる企業努力だったら問題がないわけですが、シェアの9割を得るために、あるいは9割を得ているからこそ有利な契約を強いたり、他の企業を排除することをしていないか、そうした結果として消費者に損害を与えていないかということが争点になります。

私もスマホを使っていますけれども、確かに買った時にはGoogleの検索が既にインストールされてますよね。検索そのものは無料ですが、検索サービス会社は消費者をうまく物を売る企業に誘導することで物を売る企業から利益を得ています。購入した承認だけではなくて、何を検索したのか。これら個人情報とも言えるビッグデータが検索サービス会社に溜まっていき、それを活用してまた広告を出して物を売る仕組みになっているわけです。ですから、知らず知らずのうちに我々が不利益をこうむっているということは確かにあり得るわけです。

最近はGAFAと呼ばれるIT業界の巨大4社については様々な議論が出てきました。アマゾンで本を買うようになって街から本屋がなくなったことから始まり、グローバルに展開しているGAFAが果たして税金をどこで払っているのかというようなこともです。

GAFAの会社としての価値、これは時価総額が500兆円にものぼります。果たしてどのぐらいかといえば、日本の国家予算(2020年度の国家予算は102兆円)どころか、日本の名目GDP(553.8兆円)にも匹敵します。この4社に睨まれたら仕事ができない、そういうことも言えるし収益構造やその配分というのも不透明とも指摘されてきました。Googleに限らず、この四つの巨大企業には世界から様々な圧力が強まってきています。

アメリカには伝統的な裁判があります。例えば、1984年には独占禁止法違反により8社に分割されてAT&Tが誕生したり、1998年には独占禁止法違反によりMicrosoftが提訴され、分割を迫られたが2002年11月に和解が成立したなどがあり、これらは先ほど言った、単に消費者の利益だけではありません。独占企業の存在によって新陳代謝が起きず、技術革新が進まないということを念頭に置いているということなんです。これは国家としてすごいことだなあと私は思います。すなわち、独占企業があぐらをかいていると新技術が生まれなくなる。その結果、国の活力が落ちてくるという懸念です。確かに長期的に見れば、消費者が得るべき技術革新の利益がなくなるとは考えられますけれども、国の意思としてそういうことを考えているアメリカはすごいなと思うんですね。

一方の日本では今、菅新政権になって携帯電話の料金引き下げに取り組んでいますけれども、確かに料金が下がることは私達にとって嬉しいわけです。しかし、民間企業の価格設定に政府が介入して下げろというのは、要は官制値下げ。日本は社会主義国ではありませんから、それでいいのかなという疑念もあるわけです。しかし先ほどのアメリカ的な理屈で言えば、考えるところがあります。というのも、ドコモはかつて携帯シェアの9割を占める大企業でした。結果としてどうなったかといえば、世界の中でスマホが開発されても日本勢がついて行けないような状態を作ってしまったと言えるわけです。

そしてもう一つすごいなと思うのは、アメリカは覇権をかけて中国とハイテク戦争をやっている真っ最中です。その最中に司法当局が自国の企業の体力、規模を奪うという裁判を行うこと。こういうことがアメリカのすごさだなと私は思いました。

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