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中田 宏が登場した、雑誌・テレビ・ラジオなどのメディアをレポートします。

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羽田空港の真の国際化実現は日本再興のラストチャンス 前編

『中央公論』(2006年9月号)掲載記事

羽田空港の再国際化が迫っているのに国は国際線制限の方針を採っている。
このままではアジア航空運輸の「首都圏パッシング」は致命的なものになる。

国際化に逆行する国土交通省

 2009年末までに羽田空港は4本目の滑走路が供用開始され、再び国際線の運航がはじまる。しかし、国土交通省は、羽田空港発着の国際線の運航回数や運航距離に大きく制限を設定する方向であり、世界のグローバル化と逆行する動きをとっている。
 人口減少社会を迎えたわが国にとって、「東アジアの経済成長をいかに取り込めるか」が大きな課題になる中で、今後の経済成長が注目されるASEAN諸国をはじめとした東アジアの国々との交流がますます重要になってくることは間違いない。
 万一、わが国が世界のグローバル化の急速な進展や、成長著しい東アジア域内で経済的な結びつきが強化されていくという大きな流れに取り残されることになれば、わが国は人口の減少に伴って経済規模も縮小するという、わが国の将来に大きな禍根を残す負のスパイラルに入っていく。このような状況を打破するためにも、国は「成長するアジアとの相互アクセスを高め、ひと・もの・資本の自由な移動を可能にする」ことが必須であり、羽田空港の国際化の推進は極めて重要なテーマである。
 羽田空港を再拡張し、再び国際線を運航する中で、首都圏が世界からビジネス拠点として認められるためには、運航に関する制限を撤廃し、これらのアジアの国々と自由に往来できる羽田空港の価値向上が必須と言っても過言ではない。
 私は、本誌の2005年2月号で、羽田空港再国際化のあるべき姿について主張した。にもかかわらず、国の羽田空港に対する国際化制限の方針は変わろうとはしていない。そこで、本稿においては、東アジア域内での経済的繋がりの緊密化や、国際航空情勢を取り巻く最新の動向、今年の6月に本市が実施した空港に関する企業へのアンケート調査結果などをご紹介しながら、国の制限を撤廃する必要性や羽田空港の真の国際化について、新たな角度から論じることとしたい。

アジア諸国とは緊密になるばかり

 わが国を取り巻く経済環境は変化が激しい。東アジアの域内貿易比率で見ると1985年に36%であったのに対し、2003年には53%まで上昇し(外務省まとめ)、今なおその比率は継続的に伸びている。 この背景として、アジアへは製造業を中心とした企業進出が多く、投資面での将来性も高いうえ、制度的にもASEAN諸国を中心に貿易における関税障壁の撤廃をはじめとした、FTA(自由貿易協定)、EPA(経済連携協定)を推進していることがあげられる。また、中国の約13億人、インドの約11億人といった巨大人口を含めたアジアは、世界の成長センターとして将来、世界経済をリードしていく潜在性が高いと言える。
 世界各国・地域のGDP成長率の推移を見ると、2003年の統計では、日本が1.4%、米国が3.0%、EUが0.8%であるが、ASEAN全体では5.0%、中国は9.3%となっている。また、最新の貿易統計を見ると、2005年度の日本の貿易総額は約129兆円であるが、日米間では22.8兆円と全体の約18%であるのに対し、対アジアでは59.4兆円と全体の46%と高く、アジアとの貿易が大きなウェートを占めている。
 このような貿易構造を踏まえて、わが国においてもASEANをはじめとした各国とFTA /EPA交渉を進め、関税撤廃のみならず、人の移動の自由化、円滑化や、知的財産などさらに幅広い分野の取引を目指している。また、文化面においては、昨年の通商白書でも「東アジア地域における文化的な融合の進展は、東アジアの地域統合や経済統合を含めた、東アジア域内の関係の緊密化の下支えとなり得る」とあり、わが国と東アジア地域との連携強化の重要性は言うまでもない。
 日本は、2002年11月にシンガポールとEPAを締結したのをはじめに、マレーシア、メキシコとEPAを締結、フィリピン、タイとは大筋合意に達している。さらに韓国、インドネシア、ASEAN、チリとも交渉中であるが、いずれも東アジアの国々が中心となっている。EPAの目的が「貿易を活性化させ、国内産業の競争力を高めるなど大きな経済効果に加えて、相手国と実質的な一体感のある市場を形成でき、日本企業の活動の場を広げる」ということを考えれば、今後、日本経済の発展においては、東アジアとの関係をいかに重要視しているかがわかると思う。また、昨年12月にはマレーシアで第1回東アジア・サミットが、ASEAN+3(日中韓)首脳会議に引き続き開催された。東アジアの各国が、地域の一体化を目指す東アジア共同体構想の具体化に向けた第一歩である。
 東アジアの各国は、このようにFTA/EPA交渉という後押しもあり、近年今までになく緊密な関係になり、交流は拡大している。日本と各国との貿易額を見ても、この十数年で、中国は4倍、韓国は1.5倍、ASEAN諸国も1.5倍に増加している。しかし、中国やASEAN各国の相互貿易依存度は、これ以上の高い伸び率であることにわが国として危機感を覚えることも事実である。
 私は、21世紀の我が国は、このようなアジアとの連携を柱としながら、生産性の向上と所得拡大の好循環、グローバル化の推進が質の高い経済力を育み、併せて経済力を高めることは、間接的にも、国際社会におけるわが国の発言力の向上を導くものであると考えている。この国際社会における発言力の向上は、資源やエネルギーを含めた安全保障や環境問題など様々なテーマにわが国が貢献していくことも意味する。

航空運輸の「日本パッシング」

 以上のことから、国際交流のためのゲートウェイ整備は重要であり、羽田空港の再国際化をわが国の大きなビジネスチャンスとして生かしていかなくてはならない。成田は1978年の開港から現在に至るまで、慢性的な混雑にもかかわらず、日本経済面での魅力と、欧米をはじめとした長距離路線の給油中継基地としての2つの役割で、世界に類を見ない大型機の比率の高い過密空港として利用されてきた。しかし、航空機の性能の向上により、欧米からの長距離路線は日本で給油することなく、香港やシンガポールなどの新興経済国・地域への直行便の運航が可能となった。併せて、昨今の日本のコスト高が敬遠され、航空運輸の世界では日本パッシングが始まっている。
 都心部から遠く、空港は狭隘で、着陸料も高く、将来に向けても大幅な増便を望めない成田空港が競争力を低下させる一方で、1990年代に大きく拡張され、積極的に国際路線を誘致したソウル、上海、香港などアジア諸国の空港競争力が高まっている。これらの国々がFTA/EPAの実効性の向上を目指していることは明白である。
 さらにここ数年の流れは、空港建設面のみならず、国際協定面でもわが国の国際航空需要の将来に脅威となる事態が動き始めている。例えば、2004年6月に米中航空協定が締結され、米国と中国の間の直行便が、現行の週54便から今後6年間で週249便まで増加することになった。協定はさらに2年ごとに見直しされていく予定で、将来に向けては運航便数の自由化に行き着くことも考えられる。この面からも、日本を経由していた人や物の流れは今後、日本を通過する米中間の流動に置き換えられることになってしまう。すでに、米国の大手航空貨物会社であるフェデックスは、現在フィリピンにあるアジア太平洋ハブを中国に移転することを決めている。EUをはじめとした米国以外の航空会社も、中国航空企業に対する出資などで、中国を拠点としたビジネスに大きくシフトしている。
 このように、欧米各国をはじめとしたエアライン各社は、日本での事業の拡張よりも、成長する東アジアに焦点を向けながら、アジアにおけるハブ空港を成田空港(東京)から上海や広州などの中国沿岸都市やASEAN諸国に移転するなど長期的な視点での投資を進めているのである。

21世紀の鎖国、日本の航空政策

 私は、今年5月、羽田空港の活用と東アジア地域の安定的発展を目指し、中国・北京市、韓国・釜山広域市、台湾・台北市を訪問し、横浜市との間におけるビジネス・観光・スポーツ・文化等相互交流の推進や、今後の羽田空港の活用に向けて、協力的な推進活動をするため、都市間提携を締結することとしたのである。これは、これまでの包括的な姉妹都市提携と違い、テーマと期限を明確にしたより実務的提携であり、双方の利益に繋がる交流を促進していくという点が大きな特徴である。私は、今回の都市間提携を契機に、北京市、釜山広域市、台北市以外のASEAN諸国とも、文化や観光などさまざまな分野において、市民レベルでの交流を進め、互いの発展に繋げていきたいと考えている。
 ここで紹介した3都市との提携のうち、釜山広域市との間で結んだ協定書は、「横浜・釜山羽田空港国際化推進パートナー都市協定」という名称となっている。その背景には、私が、羽田空港の真の国際化を強く主張しているということを知った釜山市長から、昨年の8月に、「一刻も早く、釜山金海空港と羽田空港間の直行便を開設したい。そのために、両国政府に働きかけるなど共同で努力していきたい」という手紙をもらったことが大きなきっかけとなった。その後、さまざまな調整を経て、この6月に釜山市長が横浜市に来て、協定に調印したのである。海外の都市にとって、首都圏へのアクセスの強化がいかに期待されているかということの一例と言える。
 一方、国土交通省は、成田空港の混雑を理由に諸外国からの乗り入れ希望を断り続けている状況であるにもかかわらず、羽田空港の再拡張後も、増加する発着枠は国内線に優先的に割り当てるという考えに立っている。結果として、海外のエアラインは日本ではなく、発着便数に余裕があり、空港使用料も安価で、経済成長が期待されるアジアへのシフトが進むことになる。通信に譬えれば、海外から日本に電話しても、常に話し中であり、いざ通話すれば高額な請求書がくるといった感覚だ。経済産業省が東アジアを中心にFTA/EPAの締結交渉を進めている一方で、国土交通省の航空政策は、いわば「21世紀の鎖国」に向かっているようなものなのだ。
 このように、東アジア諸都市との関係を強化するということが国家的課題であることは、誰もが認めるところであろう。今後の日本経済の発展の鍵は、日本と東アジアとの「ヒト」と「モノ」の往来を担う航空政策にかかっていると言っても過言ではない。その解決の突破口となるのが戦略的な航空政策であり、日本経済の核である羽田空港の再国際化の推進である。